国際税務の at random マメ用語

「租税条約」ってなに?──ものすごくカンタンな3分間レクチャー (2006.6/5)

日本もアメリカ・イギリス・中国をはじめ、世界の56カ国と二国間租税条約を締結していますが、その主な役割は、他ならぬ二国間での「二重課税の回避」です。

日本企業・個人が海外でモノを売って得た所得に対する“国際的二重課税”。
それは、住んでいる国=日本(居住地国)と所得を得た海外の現地国=(源泉地国)の双方で同時に課税されることで生じます。
各国は、それぞれの法律で国際的二重課税を解消する仕組みである「外国税額控除制度」を手当していますが、この制度には限界があり“常に・必ず・完全に”二重課税を解消するものではありません。

これを根絶したければ、

ある国の企業が海外で得た所得は、一方の国=「居住地国」か、他方の国=「源泉地国」か、いずれかの国でのみ課税する

──ことにして、常に「国際的一重課税」とすればよいわけです。

この考え方に則り、お互いの国の法律の定めを超えて、

一方の国(例:日本又はアメリカ)の企業・個人」が
他方の国(例:アメリカ又は日本)」で稼いだ所得」は
もっぱら
一方の国(例:日本又はアメリカ)」でのみ課税できる。
他方の国(例:アメリカ又は日本)」は課税してはならない。

──ということを、相互に取り決めて承認しあったものが「租税条約」です(課税する権利──課税権の国家間の割り振りに関する取決め)。

日本を含む各国が結んでいる現行の租税条約のオーソドックスなパターンは、上記のとおり、もっぱら「その企業等の母国でのみ課税&稼いだ国では免税(又は課税額の軽減)」=“居住地国課税&源泉地国免税”という基本ラインにより、所得を得た源泉地国サイドでの課税を抑制・減免するかたちで、できるかぎり二重課税の温床を解消しようとするものです。

Ex1.

(1)日本企業(=一方の国の居住者)
(2)アメリカ(=他方の国)で稼いだ所得は、
(3)アメリカ(=他方の国=所得源泉地国)では課税されず
(4)日本(=一方の国=居住地国)でのみ課税される。

Ex2.

(1)アメリカ企業(=一方の国の居住者)
(2)日本(=他方の国)で稼いだ所得は、
(3)日本(=他方の国=所得源泉地国)では課税されず
(4)アメリカ(=一方の国=居住地国)でのみ課税される。

※二国間租税条約の条文は「一方の国が・・・他方の国の・・・」という記述となっています。適宜、この「一方の国」「他方の国」に、二国の国名をあてはめて読むことになります。日米条約であれば、日本を「一方の国」とすれば、アメリカが「他方の国」になります。逆に、アメリカを「一方の国」とすれば、日本が「他方の国」となります。

それでも国際的二重課税はなくなりません。なぜ?

外国税額控除制度に次いで租税条約でも国際的二重課税の排除が措置されていますが、それでも二重課税は、完全にはなくなりません。
一般に、租税条約は、「すべての所得について一方の国でのみ課税」としているわけではなく、所得の種類によって、双方の国(居住地国&源泉地国)で同一の所得への課税を認めあっています。また、日本企業が、日本と租税条約を締結していない国で所得を得た場合は、当然ながら、その所得について二重課税が行われます。

KeyWord

≪租税条約≫

  • 非居住者に対する国内源泉所得課税で適用
     →自国の非居住者(=相手国の居住者)が対象

Ex.A国居住者がA国と日本で二重課税を被るケースで、日本での申告・納税に当たり、条約を適用して納税額を軽くする。
(1)日本とA国の租税条約は、日本においては、日本の非居住者=A国居住者(が日本で得た日本国内源泉所得に対する日本での課税)に対して、“免税又は課税の軽減”というかたちで適用される。
(2)A国と日本の租税条約は、A国においては、A国非居住者=日本居住者(がA国で得たA国国内源泉所得に対するA国での課税)に対して、“免税又は課税の軽減”というかたちで適用される。
○二国間租税条約で取り決められた事項は両方の国に等しく適用される。

おまけ

≪国際的二重非課税≫

A国とB国とが、租税条約で「一方の国(A国又はB国)の居住者が他方の国(B国又はA国)で得た○○所得については、他方の国(源泉地国=B国又はA国)は課税してはならない。一方の国(居住地国=A国又はB国)のみが課税できる。ただし課税しなくてもよい」と取り決めたとします(源泉地国免税→居住地国にのみ課税権)。

そのうえで、A国が自国の税法(国内法)で「A国の企業・個人が海外で得た○○所得については特別に非課税とする」という課税の特例(租税特別措置)を設けたとします。その結果、「A国居住者がB国で得た○○所得」は……?

(1)源泉地国で非課税
A国居住者は、B国で得た○○所得につき、AB租税条約により、源泉地国であるB国では課税されません(その逆も同様。つまりB国居住者がA国で○○所得を得た場合、源泉地国=A国では課税されません)。
(2)居住地国でも非課税
A国居住者は、条約では課税できる権利を付与された(=課税してもしなくてもよい)

A国が、国内法の特例で、この○○所得を非課税(課税権を行使しない)としていることから、居住地国においても課税されません(B国居住者がA国で○○所得を得た場合の居住地国=B国での課税関係はB国の国内法に従います)。

源泉地国でも非課税、居住地国でも非課税──このような事態を、ここで「国際的二重非課税」と呼んでいます。

【参考】
牧野好孝・儘田佳代子共著『租税条約適用届出書の書き方』(税務研究会出版局)

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