国際税務の at random マメ用語

租税条約がないとどうなる?~日本人社員が台湾に出張するケース&台湾人社員が日本に出張するケース~(2016.3/4日更新)

日本と台湾には正式な国交がないことから、両国間には租税条約は締結されていません。一方で、民間主導による経済交流は活発に行われています。

2014年実績ベースで、台湾は我が国にとって中国・米国・韓国に次いで貿易(輸出)額で第4位(財務省調べ)、台湾にとっても日本は中国・米国に次いで同第3位(台湾経済部調べ)を占めており、ともに重要な交易パートナーです。

租税条約は、本コーナーでも随時ご紹介してきましたが、「お互いに相手国の居住者(個人・法人)が自国内で得た所得への課税を税法の定めを修正して軽減・免除しましょう」という“取決め”です。「居住地国のみ課税・源泉地は減免」とすることで、二重課税を排除するところにあります。逆にいえば、租税条約が締結されていない国同士では、相手国居住者に対し国内法どおりの課税となります。

例えば、我が国の国内法では、外国法人が日本から支払を受ける使用料について、20%の源泉徴収を行うこととしていますが、アメリカなど、ここ10年ほどの間に条約改正が行われた主要国との間では、相互に「免税」(居住地のみで課税)とされています。

また、本コーナーの第11回で採り上げましたが、日本国内に支店等(PE)を有しない外国法人が、日本で、専門的なコンサルタント業務やエンジニアを派遣して行う技術指導などに係る「人的役務の提供事業」による所得を得た場合、租税条約未締結国の企業であれば課税されるのに対し、条約締結国では免税となります。

身近なところでは、第13回で採り上げました「相手国に出張した場合の現地所得税課税の有無」があるでしょう。

繰り返しになりますが、国際課税の共通ルールでは、非居住者個人が得る給与所得は、勤務地が所得源泉地となります。従って、外国企業の自国非居住者社員が、自国に出張等で滞在・勤務した場合、たとえ1日でも、その「1日分の給与」に対して出張先の国が所得税を課税する権利を有することになります。租税条約では、これを修正し、滞在・勤務が「183日以下」等の一定要件を満たすケースでは、出張先の国(給与所得の源泉地国)は課税を免除することとしています。これが「短期滞在者免税」と呼ばれるものです。

ここで、①日本居住者社員が台湾に出張に行くケースと、②台湾居住者社員が日本に出張に来るケースを考えてみましょう。いずれも、日本と台湾のそれぞれの国内法が定める課税に服することになります。

日本→台湾 ①のケース

<a>日本での課税

日本勤務日数分給与(日本源泉所得)と台湾勤務日数分給与(台湾源泉所得)の合計額(全世界所得)に対して居住者課税

<b>台湾での課税

台湾勤務が90日までは課税なし。91日から勤務滞在日数分の給与(台湾源泉所得)に対して非居住者課税
☞このケースでは、台湾勤務日数分が91日を超えると、その分について日本と台湾で二重課税となります。その際、台湾で課税された所得税額を日本の所得税額から「外国税額控除」して調整します。

台湾→日本 ②のケース

<c>日本での課税

たとえ1日でも勤務滞在日数分の給与(日本源泉所得)に対して非居住者課税の権利あり(実際に課税するかしないか・できるのかできないのか、は別として)

<d>台湾での課税

台湾勤務の台湾源泉所得に対して居住者課税&日本勤務分の日本源泉(国外源泉)分については課税せず。
☞台湾は居住者課税で「属地主義」をとっており、国外源泉所得への課税は原則行われません。従ってこのケースでは日本は日本勤務日数分、台湾は台湾勤務日数分をそれぞれ課税するので二重課税は生じません。

台湾の日本居住者への課税<b>が、台湾滞在90日までは免税となっているのに対し、日本の台湾居住者への課税<c>は1日から課税できることになっています。つまり、双方の国内法に定める非居住者への国内勤務分給与への課税では、90日のアローアンスがある台湾の方が「ゆるやか」な規定となっているといえます。
また、二重課税は<b>のケースで、台湾滞在が91日を超えるケースにおいてのみ生じることがわかります。

さて、現在開催中の国会には、「台湾居住者(個人・法人)へのわが国での課税を租税条約と同様に軽減する」ことを目的とした新法案が提出されています(詳しくはこちら)。これは、昨年、日本と台湾の民間団体が合意した“租税取決め”をベースとしたもので、同じ内容で、台湾も「日本居住者(個人・法人)への台湾での租税条約並み課税」を国内法等で手当することとなっています(相互主義)。
租税条約の条文(条項)は「一方の国の居住者が他方の国で得た所得の他方の国での課税を減免する」と、1本で双方の国の居住者に適用される書き振りとなっていますが、日本と台湾は政府間交渉ルートが存在しないので条約は結べません。そこで、それぞれの国内法で、上記の条項に相手国名を入れて同時に手当することとなったわけです。

短期滞在者免税も、オーソドックスな租税条約の規定が踏襲されています。
両国の改正国内法が施行・適用されれば、日本は台湾居住者への課税を滞在1日以上から183日超まで緩和、台湾も日本居住者への課税を滞在91日以上から183日超まで緩和することになります。

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